バイエルンの皇帝・シュトイバー

9月21日に行われたバイエルン州議会選挙で、E・シュトイバー首相率いるCSU(キリスト教社会同盟)は、60・7%という戦後二番目に高い得票率を記録し、初めて州議会の議席の3分の2を確保した。

CSUの優勢は予想されていたが、これほどの地滑り的な勝利を収めるとは誰も予想していなかった。CSUが得票率を前回の選挙に比べて8ポイント近く伸ばしたのに対し、SPD(社会民主党)は得票率を9ポイント減らして、19・6%という戦後最悪の選挙結果となった。緑の党が2ポイント得票率を増やしたことを考えると、
SPDの票の減り方は、やや異常である。

投票率が57・3%と、前回に比べて12ポイント減ったことも大きな特徴であり、SPDの支持者の多くが棄権した可能性を示唆している。今回の選挙は、景気後退のために、多くの市民が失業の不安を抱き、人員削減のために労働量が増えていることに不満を持つ中で行われた。つまり経済が大きなテーマだったわけだが、CSU圧勝は、有権者が経済政策については社民党よりもシュトイバーに対して、強い信頼を寄せていることを浮き彫りにした。

また今回の大躍進で、野党内でもシュトイバーの地位は格段に高まった。3年後の連邦議会選挙では、彼をしのぐ実力を持つ野党側の首相候補は、今のところ考えられない。一方SPDの惨敗は、シュレーダー首相が進める年金・健保制度の改革について、有権者がはっきり「ノー」と言ったことを意味している。市民は労働コストを減らして、企業が雇用を拡大できるように、社会保障システムを改革することの必要性を頭では理解しているのだが、痛みが伴う改革が自分の身に及ぶことは拒否しているわけだ。

その他の面でもシュレーダーの経済政策に対する市民の不満は高まっている。景気が回復しないために、地方自治体の財政は悪化している。失業率は10%のまま一向に回復しないし、環境税のためにガソリン代や電気代は上がる一方である。シュレーダーは昨年の選挙ではイラク戦争に反対することにより、ドイツ市民の反戦感情を巧みにくすぐって支持率を引き上げ、辛くも首相の座を守ったが、3年後の選挙では同じ手は通用しない。


SPD
は、2000年以降他の州議会選挙でも、惨敗に次ぐ惨敗を経験してきたが、今回のバイエルン州議会選挙の結果は、2006年に政権交代が起こる可能性が強まったことを、はっきり示している。

週刊 ドイツニュースダイジェスト 
2003年10月3日号掲載